薬剤師なら知っておきたい! 「東洋の英知、漢方医学のヒストリー」

前回のブログで「漢方カウンセラー」の資格についてご紹介する際、漢方の考え方について簡単に触れました。今回は「漢方の歴史」について解説していきます。中国で生まれたとされる漢方は、どのように日本へ伝わりどのように発展したのでしょうか。

漢方という医療のカタチ

日本で「漢方」と言った場合は原則として「日本漢方」を指します。漢方発祥の地は中国ですが、日本に伝わった後独自の進化をとげました。江戸時代にオランダから西洋医学の知識が入ってきた際に、両者の区別をつけるため漢方という言葉が用いられるようになったそうです。中国と比べると、中国の漢方薬は今でも煎じて飲むものが多いのに対し、日本では錠剤や粉末が用いられやすいなどの違いがあります。

中国医療が日本に導入されたのは飛鳥時代。奈良時代の遺産である正倉院には、765年に東大寺へ献上されたとされる「人参」などの漢方薬が現存しています。当初は宮中の人々専用だった漢方も、鎌倉時代になると民衆へもその知識が与えられるようになり、室町時代には曲直瀬道三が医学校を設立しました。彼は戦国大名の毛利元就や、織田信長の診察を担当したことでも有名です。

日本漢方の本格的な始まりは江戸中期から

現代で日本漢方として用いられているものの始まりは、意外に最近の江戸時代中期から。3世紀頃に中国で記されたとされる「傷寒雑病論」から発展した理論に基づく治療が活発になったり、より臨床性を重視して柔軟に治療へ活かすべきとする派閥があらわれたりと、日本漢方としてより独自性を発達させていきました。

しかし、明治時代になると西洋化の波は医学会にも訪れます。西洋医学のみを優遇する流れに異議を唱える医師もいたものの、国は医業を免許制にすることで実質的に西洋医学以外の医療を排除しようとしました。再び漢方が注目されるようになったのは昭和になってからのことです。1960年代には薬害が相次ぎ、過度な西洋医学賛美は良くないのではないか、という意見が増えてきました。

令和になった今、漢方は身体にやさしい医療として広く親しまれています。実は漢方でも効能が強い薬には副作用があり、漢方薬=薬害が発生しないというのは誤解です。良くも悪くも体への作用が科学的に裏付けられ、西洋医学とは異なるアプローチで、人々の健康に役立つようになりました。薬剤師という薬のプロフェッショナルにとって、漢方薬は興味深い対象なのではないでしょうか。漢方を上手に活用し、患者さんにとってよい選択を勧められるよう、この機会によりくわしく勉強されてみてはいかがでしょうか。