実は古代から使われていた! 不思議な力を持つ薬?医療用麻薬ヒストリー

「麻薬」という言葉、薬剤師の皆さんはどのような印象を持っていますか?一般的には違法で危険なもの、というイメージを抱く人が多いでしょう。もちろんそれは誤りではないのですが、麻薬の代表ともいえる植物のケシは古くから鎮痛剤として医療に用いられてきました。今回はそんな医療用麻薬の歴史についてご紹介します。

古代ギリシア人も使っていた
ケシの栽培だけで言えば、実に5000年以上も昔の遺跡から栽培された種が見つかっています。さらに、紀元前1世紀頃には当時のローマ帝国で医薬品として使われた記録もあるそうです。2000年前には既にその鎮痛効果が利用されていたわけですね。中国の有名な歴史書である三国志にも、手術用の麻酔薬として使われた記録があります。

実は麻薬濫用が問題視され始めたのは意外に最近、19世紀より後になってからです。科学が発達したことで抽出や改変が容易になり、庶民にまで麻薬が出回るようになりました。自然状態で使うより有害かつ依存性の高いヘロインやコカインなどが生まれてしまったのです。こうした麻薬は労働者や軍隊の中で広がっていき、深刻な健康被害をもたらしました。

現代医療で使われるオピオイド
ケシから作られるアヘン剤の効能は古くから知られていましたが、アヘンが効く理由が解明され始めたのは1970年代になってからでした。麻薬の歴史を考えると、つい最近のことと言っても過言ではないでしょう。現代医療において麻薬性鎮痛剤はオピオイドと総称され、もっぱらがん等の痛みをやわらげることに使われています。

オピオイドオピオイド受容体に作用することで効果を発揮します。しかしオピオイド受容体は全身にあり、どこにどのように作用しているのかはまだ完全に解明されていません。現在は、μ、δ、κ、という三種のオピオイド受容体のうち、鎮痛作用、多幸感、精神・身体依存形成に重要な役割をもつμ受容体に作用しているのではないかというのが通説です。

依存性を心配する患者さんも多くいますが、痛みの強い状態では内因性のκオピオイド神経系が亢進しているので薬の効果でμを亢進することでバランスが取れます。逆になんともない人がオピオイドを摂取するとμだけが亢進されて依存性をもたらす原因になるそうで、アメリカ等では濫用されているケースもあるようです。

一般的には怖いイメージの強い麻薬ですが、古くからの人類の友でもあります。また現在では、医療用麻薬はがんなどの強い痛みのコントロールに欠かせない薬品です。麻薬の疼痛管理への使用がさらに普及すれば、薬剤師の業務として関わることも増えてくるのではないでしょうか。麻薬と人類、正しくつきあっていけるようにしたいものですね。