安全と利便性のジレンマ |自由か規制か?市販薬の通販ルール

2014年に薬機法が改正されて以来、多くの市販薬がインターネット上で販売されるようになりました。消費者としては他の生活用品や食品と同じように通販で薬を買えるのは嬉しいですが、薬剤師の立場からすると安全性を考え対面販売の方が望ましい、と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は薬の通販に関するジレンマについて見ていきましょう。

規制緩和は訴訟から
元々市販薬については、法律による規制で薬剤師による対面販売しか認められていませんでした。しかしドラッグストアなど実店舗でも薬剤師が不在のケースもあり、通販利用の普及もあって厳しすぎる規制は時代にそぐわないという声が上がり始めたのです。

2009年には、ついに厚生労働省の規制命令は不当なものであるという訴訟にまで発展。最高裁は2013年に原告側の主張を認める判決を下しました。これを受けて改正が検討されることとなり、2014年に改正薬事法が施行されることに。ただし、販売業者は通販専門でなく実店舗も持っていなければならないことや、市販薬に切り替わって間もない薬は販売を認めないなどの規制は残されています。

規制は違憲? 未だ議論は終わらず
現在でも販売の手を広げたい通販事業者サイドと、規制緩和による安全性への懸念をぬぐえない厚生労働省サイドで議論は続いています。2019年の2月には大手通販サイトを営む楽天の子会社Rakuten Direct(東京、旧ケンコーコム)が起こした訴訟の二審が終結。同社は医療用から市販用に切り替わって間もない薬の販売の規制について、営業の自由を保障する憲法に違反すると主張していました。

東京高裁は請求を退けた一審の判決を支持。斉木裁判長は判決で、「規制は安全性評価が未確定な薬の不適正な使用を防ぐ目的で、合理性がある」と指摘しました。憲法ではさまざまな自由が保障されている一方、「公共の福祉」を尊重するべきともうたわれています。今回の判決では、安全性という「公共の福祉」を守るために規制が必要と判断された、と言えるでしょう。

自由と責任は表裏一体とよく言われますが、薬の使用は自己責任という言葉で片づけるには重すぎる結果を引き起こすことも。だからこそ、専門家の監督指導が必要になるケースも多いわけです。さまざまな分野で規制緩和が進められている現代において、薬はどこまで自由化されていいのか。薬剤師の皆さんには、薬のプロの視点から意見が求められる場面が今後増えていくかもしれません。