可憐な香りでヒーリング効果も!「古来より愛される梅の花ヒストリー」

春になるまであと少し。桜の開花を楽しみにされている薬剤師さまも多いのではないでしょうか。しかし、まだ寒さ厳しい2月に上品な佇まいで開花する、日本の代表的な樹木があります。それが、古来より美しい花で人々に愛されてきた「梅」。実の方に注目がいきがちですが、今回は梅の花の香りがもたらすヒーリング効果と、日本文化の中での存在感を見てみましょう。

梅林にたたずむだけで癒される

梅の原産地は中国の江南地方といわれ、日本には弥生時代に渡来したそうです。奈良時代では桜ではなく、「梅」が花見の花とされていました。
その花の香りには鎮静作用があり、梅林の中にいるだけで神経がやすまり心おだやかになるという効果が。特に白梅の主成分は「酢酸ベンジル」という甘くやわらかな香りの化合物です。この酢酸ベンジルは「クチナシ」や「ジャスミン」に含まれる香り成分で、精神を高揚させ、多幸感をもたらす効能が期待できるとも。クチナシやジャスミンの華やかな甘さと比較すると、梅花の可憐で儚げな甘さは、日本人の気質にもあっているかもしれませんね。

学問の神様に愛された花

梅の花には、癒し効果以外にも興味深いエピソードが。梅花の異名には「好文木」というものがあり、その由来は中国の古い王朝・晋の武帝にまつわる故事。“武帝が学問に親しむと梅の花が開き、学問をやめると花が開かなかった”というものです。

こういった学問にまつわる梅のエピソードは日本でも多数みられ、梅は古くから奈良の平城京を象徴する花とされ、和歌や能に取り上げられることで文化や学問と深く関わってきました。
学問の神様として知られる菅原道真も、生前に梅の花をこよなく愛した1人。「東風(こち)吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ」。これは彼が政治的対立によって太宰府へ左遷される際、庭の梅の花に別れを惜しんで詠んだ歌です。その梅の木は、後に彼を追って太宰府へ飛んできたという「飛梅伝説」があり、太宰府の他株分けされた梅の木が、道真を祀る各地の神社に植えられています。

努力・忍耐のすばらしさを説く

古くから親しまれてきた梅の花、その特徴にまつわる言葉も残されています。有名な「桃栗三年、柿八年」にも実は続きがあります。「桃栗三年、柿八年、柚(ゆず)の馬鹿野郎十八年、梅はすいすい十六年」。種から実になるまでの期間を謡うこの言葉は、一人前になるには努力と忍耐が欠かせないという教訓も含んでいるのです。

気品ある甘い香りが魅力の梅の花ですが、その精油(エッセンシャルオイル)の採取は非常に難しいとされており、自宅で気軽に香りを楽しむことはできません。お花見シーズンにはまだ早いですが、温かい飲み物を片手に梅の木を眺め、ヒーリング効果を存分にうけながら古き時代に思いを馳せるのも、乙なものではないでしょうか。